人権擁護推進審議会答申(1999年)ーエッセンスの紹介ー

1. はじめに

 米ソ冷戦後の1993年、国連は世界人権会議で人権の普遍性を確認し、1995年から「人権教育のためのの国連の10年」をスタートした。

 それに日本政府も応答し、人権擁護推進審議会を設置し、1999年に同審議会は人権擁護推進審議会答申を出した。その後、同答申を前提に関係省庁は人権政策を展開した。

 日本では人権には、「一部の人間の言葉」というイメージがある。しかし、それは全ての人間の幸福と関係する。

 本稿では同答申のエッセンスを紹介する。

2. 人権とは?ー「幸福を追求する権利」ー

 人々が生存と自由を確保し,それぞれの幸福を追求する権利-それが人権である。この人権の尊重こそが,すべての国々の政府とすべての人々の行動基準となるよう期待されている。つまり,政府のみならず人々の相互の間において人権の意義が正しく認識され,その根底にある「人間の尊厳」が守られることが期待されているのである。

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/jinken/06082102/016/008.htm

3. 人権状況とは?ー「公権力ー国民」と「国民ー国民」での人権侵害ー

 人権は,「人間の尊厳」に基づく権利であって,尊重されるべきものである。しかし,現実には,人々の生存,自由,幸福追求の権利,すなわち人権が,公権力と国民との間のみならず国民相互の間でも侵害される場合があり,その一つの典型が不当な差別であることは,広く認識されるに至っている。このような人権侵害とされるものの中には,人権と人権が衝突し,その衝突状況を慎重に見極めて人権侵害の有無を決すべきものもあるが,多く見られるのは,不当な差別のような一方的な人権侵害である。

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/jinken/06082102/016/008.htm

4. 人権教育・啓発の押し付けはNG

 人権教育・啓発は国民一人一人の心の在り方に密接にかかわるものであることから,それが押し付けになるようなことがあってはならないことは言うまでもない。

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/jinken/06082102/016/008.htm

5. 人権課題の要因とは?ー合理的判断能力の欠如等ー

 このように我が国には今なお様々な人権課題が存在するが,その要因としては,人々の中に見られる同質性・均一性を重視しがちな性向や非合理な因習的な意識,物の豊かさを追い求め心の豊かさを軽視する社会的風潮,社会における人間関係の希薄化の傾向等が挙げられる。国際化,情報化,高齢化,少子化等の社会の急激な変化なども人権問題を複雑化させる要因となっている。また,国民一人一人において,個々の人権課題に関して正しく理解し,物事を合理的に判断する心構えが十分に備わっているとは言えないことが,それぞれの課題で問題となっている差別や偏見につながっているという側面もある。

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/jinken/06082102/016/008.htm

6. 人権教育の課題とは?ー教育の中立性の確保等ー

 ともすると知識を一方的に教えるにとどまっている,人権尊重の理念について必ずしも十分認識していない指導者が見られる,などの問題が指摘されている。また,人権教育を実施するに当たっては,外部の不当な介入を受けることなく,教育の中立性を確保することが引き続き重要な課題となっている。

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7. おわりに

 現在(2026年)、人権擁護推進審議会答申(1999年)から27年が経過した。当時と比較すれば、「ハラスメント」等が重視されるようなった。しかし、人権抑圧的な自生的秩序の構造は、大きくは変化していない可能性もある。その場合、自生的秩序を人権を基礎にした社会秩序へ移行する「アーキテクチャ」が必要になる。

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