世界人権宣言の第1条・第29条の起源ールネ・カサン案ー

1.はじめに

 1948年に国連で採択された世界人権宣言の第1条と第29条は、当初の国連の事務局案には存在しなかった。

 では誰が起草したのか?

2.ルネ・カサンとは?

 ルネ・カサン(1887~1976)は、フランスの法律家、政治家である。

 1948年に国連が採択した世界人権宣言の最も重要な起草者であった。人権宣言20周年にあたる1968年、カサンは、全世界の人権擁護の法的基ともいうべきものを作り出したその功績が称えられて、ノーベル平和賞を受賞した。(中略)ノーベル委員会は(中略)個人の権利が国家の権利と同じ尊敬を与えられるような世界に向けての最初の一歩であると述べた。

「ルネ・カサン」、ヒラリー・プール[梅田徹訳]『ハンドブック 世界の人権』明石書店、2001年。

3.John P.Humphreyが中心に作成した国連の事務局案

 第1条:すべての人は、自国及び(国際社会)国連に対して忠誠義務を負う。すべての人は、共通善に貢献しうるような共通の犠牲の公平な負担を受諾しなければならない。

 第2条:権利行使において、すべての人は他人の権利及び国家・国連の正当な要求によって制限される。

小坂田裕子「国際人権法における人間の尊厳(一)ー世界人権宣言及び国際人権規約の起草過程を中心にー」、『中京法学』第46巻1・2号、2012年、p.31。

4.ルネ・カサン案

 第1条:すべての人間は、一つの家族の構成員であって、自由で平等の尊厳および権利を有しており、互いに兄弟としてみなさなければならない。

 第2条:社会の目的は、他人のためにある存在が犠牲となることなく、すべての人が完全かつ安全に、その身体的、精神的及び道徳的人格を発展させることを可能にすることにある。

 第3条:人間は社会の援助と支持をなくして生き、その目的を達成することはできないため、すべての人は社会に対して次の基本的義務を負う。すなわち、法の遵守、有益な活動の実行、共通善のために要求される負担と犠牲の受諾である。

 第4条:すべての人の権利は他人の権利によって制限される。

同上書、p.32~33。

5.世界人権宣言の第1条・第29条

 上記のカサン案4条項は、修正、併合、移動を経て次の世界人権宣言の第1条、第29条になった(同上書、p.33)。

Article 1

 All human beings are born free and equal in dignity and rights. They are endowed with reason and conscience and should act towards one another in a spirit of brotherhood.

Article 29

  1. Everyone has duties to the community in which alone the free and full development of his personality is possible.
  2. In the exercise of his rights and freedoms, everyone shall be subject only to such limitations as are determined by law solely for the purpose of securing due recognition and respect for the rights and freedoms of others and of meeting the just requirements of morality, public order and the general welfare in a democratic society.
  3. These rights and freedoms may in no case be exercised contrary to the purposes and principles of the United Nations.

https://www.mofa.go.jp/policy/human/univers_dec.html

6.おわりに

 第1条と第29条を起草したのは、ルネ・カサンである。両者はセットで起草され、1948年、国連総会で採択された。

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