国際人権へのグローバル宗教のコミットーバチカンの場合ー

1.はじめに

 1948年、国連は世界人権宣言を採択した。その後、国連は国際人権条約を発展させた。

 米ソ冷戦後の1993年、国連は世界人権会議で「ウィーン宣言及び行動計画」を採択し、人権の普遍性、相互不可分性、相互依存性、相互関連性を(再)確認した。国連は「人権教育のための国連の10年」の後、現在、「人権教育のための世界計画」に取り組んでいる。

 日本政府、特に外務省は国連では積極的に人権外交を展開している。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/kyoiku/index.html

 他方、カトリックのようなグローバル宗教も、国際人権にコミットしている。

2.国際人権へのバチカンのコミット

 米ソ冷戦期の1963年、ヨハネ23世は『パーチェム・イン・テリス(地上の平和)』で、次のように世界人権宣言にコミットした。

 国際連合が果たしたもっとも重要なことの一つは、一九四八年十二月十日の国際連合総会による『人権に関する世界宣言』の採択です。この宣言の前文は、宣言に列挙されているすべての権利と自由の有効な承認と遵守は、すべての民族と国家が目指すべき目標であると謳われています。

 この宣言のいくつかの点について、異議や留保が申し立てられましたるしかし、この宣言が、世界規模の共同体の法的、政治的組織化における重要な一歩であることに疑いの余地はありません。この宣言は、すべての人が例外なく人間としての尊厳をもっていることをもっとも厳かな表現で認めています。

教皇ヨハネ二十三世[マイケル・シーゲル訳]『回勅 パーチェム・イン・テリスー地上の平和ー』ペトロ文庫、pp.81~82。

 1960年代、ヨハネ23世は第二バチカン公会議を開催し教会の「現代化」を目指した。1965年、『現代世界憲章』では「権利と義務」(人権)は、次のように「共通善」として位置付けられた。

 相互依存が日増しに緊密になり、徐々に世界全体に広がっていくことによって、共通善――すなわち集団と個々の成員とが、より豊かに、より容易に自己完成を達成できるような社会生活の諸条件の総体――は、今日ますます世界的な広がりをもつものとなり、その結果、全人類にかかわる権利と義務を含むものになっている。こうして、それぞれの集団は、他の諸集団の必要と正当な要求、さらには人類全家族の共通善を考慮しなければならない。

 しかし同時に、人格の優れた尊厳についての自覚も増している。実際、人格は物事の世界にまさり、その権利と義務は普遍的であり侵すべからざるものである。したがって人間が、真に人間らしい生活を送るために必要なすべてのものを獲得できるようにしなければならない。

『現代世界憲章』、『第二バチカン公会議公文書―改訂公式訳―』カトリック中央協議会、2013年、pp.625~626。

 国連の世界人権会議の2年前である1991年、ヨハネ・パウロ二世も『新しい課題』で人権を再重視した。

 共産主義的全体主義や他の全体主義、そして「国家安全保障」体制の崩壊の後、わたしたちは今日、民主主義的理念や、人権に対する生き生きした関心が、世界の大勢を占めている現状―反対のしるしがないわけではありませんが―まのあたりにしています。しかし、まさにそれゆえに、自国の体制を改革しつつある人々は、この人権を明確に認識することによって、民主主義に真の確固たる基盤を与えなければなりません。

教皇ヨハネ・パウロ二世回勅『新しい課題―教会と社会の百年をふりかえって―』カトリック中央評議会、1991年、p.97。

 国連が「人権教育のための世界計画」に取り組む2015年、教皇フランシスコは回勅『ラウダート・シ』で「基本的諸権利を賦与された人格として人間」の尊重を「共通善」の原理の前提と位置付けた。

 全人的な発展に向けて譲渡不可能な基本的諸権利を賦与された人格として人間を尊重することが、共通善の原理の前提です。

教皇フランスシスコ『回勅 ラウダート・シ―ともに暮らす家を大切に―』カトリック中央協議会、2016年、p.138。

 その上で、フランシスコは「グローバル社会の現況」を「基本的人権の剥奪」等と認識し、連帯と「貧しい人々の優先的選択」を再重視した。

 不正が横行し、基本的人権を剥奪され消耗品とみなされている人の数が増えつつあるグローバル社会の現況において、共通善の原理はすぐさま、論理的かつ不可避的に、連帯と、もっとも貧しい兄弟姉妹のための優先的選択とを求める訴えとなります。

教皇フランスシスコ『回勅 ラウダート・シ―ともに暮らす家を大切に―』カトリック中央協議会、2016年、p.139。

3.おわりに

 国連の世界人権宣言第18条(1948年)では、「思想、良心及び宗教の自由」を規定している。

Article 18

 Everyone has the right to freedom of thought, conscience and religion; this right includes freedom to change his religion or belief, and freedom, either alone or in community with others and in public or private, to manifest his religion or belief in teaching, practice, worship and observance.

https://www.mofa.go.jp/policy/human/univers_dec.html

 同条は同宣言の「世俗性」の基準でもある。国際人権へのバチカンのコミットも、同条と両立可能にする必要がある。

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