国際人権への外務省のスタンスー国連の世界人権会議(1993年)の以前と以後の差異ー

1.はじめに

 1989年、米ソ冷戦が終結、1993年、国連は世界人権会議で「ウィーン宣言及び行動計画」を採択して、人権政策を展開した。国連は①「パリ宣言」、②国際人権条約の個人通報制度、③国連難民高等弁務官の創設、④人権委員会の人権理事会への改組等により人権レジームを展開した。

 また、1995年、国連は「人権教育のための国連の10年」をスタートした。

 では同会議の以前と以後、外務省の国際人権へのスタンスとは?

2.国連の世界人権会議(1993年)以前ー消極性ー

 1948年に採択された国連の世界人権宣言は、人権委員会が起草、提出したものである。しかし、当時、日本は国連加盟国ではなかった。

 1956年、日本は国連に加盟した。その際、国連憲章や世界人権宣言にもコミットした。しかし、その後、長い間、日本は人権委員会へは参加しなかった。

 日本の初参加は、1980年代である。

 その事情をカトリックの初代政府代表の緒方貞子は、次のように指摘している。

 日本は戦争中ずっと人権侵害をしてきたという過去があったと考えられたからだと思いますが、人権委員会の委員国になるのに消極的でした。他国の人権状況を批判することなどできないという感じだったと思います。遠慮というのか、自信がないというか、躊躇してきたのです。

納家政嗣+野林健編『聞き書 緒方貞子回顧録』岩波現代文庫、2020年、p.129。

3.国連の世界人権会議(1993年)以後ー積極的なコミットへの転換ー

 1995年、国連は「人権教育のための国連の10年」をスタートした。日本政府もリアルタイムで応答し、国連の「人権教育のための国連の10年」に対応した人権政策をスタートした。

 1999年、日本政府の人権政策の基礎の一つになる人権擁護推進審議会答申が出された。

1. はじめに  米ソ冷戦後の1993年、国連は世界人権会議で人権の普遍性を確認し、1995年から「人権教育のためのの国連の10年」...

 その前後から外務省も人権外交を積極的に展開し始めた。

 日本は複数回人権理事会の理事国にもなった。

 外務省は、2005年から国連がスタートした「人権教育のための世界計画」にも積極的にコミットしている。

  • 1995~2004年 人権教育のための国連10年
  • 2004年4月 第59回国連人権委員会において、「人権教育のための世界計画」を提案する「人権教育の国連10年フォローアップ決議(2004/71)」が無投票で採択された(我が国は共同提案国)。
    • 同「人権教育のための世界計画」では、終了時限を設けずに3年ごとのフェーズ及び行動計画を策定。第1フェーズ(2005~2007年)は初等中等教育がテーマ。
  • 2004年7月 上記決議をエンドースする経済社会理事会決定が無投票で採択され、国連人権高等弁務官事務所及びユネスコが行動計画を起草。
  • 2004年12月 「人権教育のための世界計画」実施を定めた「人権教育のための世界計画決議(A/RES/59/113A)」が第59回国連総会において無投票で採択された(我が国は共同提案国)。
  • 2005年7月 行動計画改訂案の採択等を定めた「人権教育のための世界計画決議(A/RES/59/113B)」が同国連総会において無投票で採択された(我が国は共同提案国)。
  • 2007年9月 「人権教育のための世界計画」第1フェーズ行動計画の2年(2008~2009年)延長を定めた「人権教育のための世界計画決議(A/HRC/RES/6/24)」が第6回人権理事会において無投票で採択された。
  • 2009年10月 「人権教育のための世界計画決議(A/HRC/RES/12/4)」が第12回人権理事会において無投票で採択された(我が国は共同提案国)。
    • 第2フェーズ行動計画(2010~2014年)は「高等教育のための人権教育」及び「教育者、公務員、法執行者や軍隊への人権教育プログラム」がテーマ。
  • 2010年10月 第2フェーズ行動計画を採択する「人権教育のための世界計画:第2フェーズ行動計画採択決議(A/HRC/RES/15/11)」が第15回人権理事会において無投票で採択された(我が国は共同提案国)。
  • 2013年9月 「人権教育のための世界計画決議(A/HRC/24/15)」が第24回人権理事会において無投票で採択された(我が国は共同提案国)。
    • 第3フェーズ行動計画(2015~2019年)は、第1及び第2フェーズの履行に係る努力の強化をすると同時に、「メディア専門家及びジャーナリストへの人権研修の促進」がテーマ。
  • 2014年9月 第3フェーズ行動計画を採択する「人権教育のための世界計画:第3フェーズ行動計画採択決議(A/HRC/27/12)」が第27回人権理事会において無投票で採択された(我が国は共同提案国)。
  • 2018年9月 「人権教育のための世界計画決議(A/HRC/RES/39/3)」が第39回人権理事会において無投票で採択された(我が国は共同提案国)。
    • 第4フェーズ行動計画(2020~2024年)は「青少年のための人権教育」がテーマ。
  • 2019年9月 第4フェーズ行動計画を採択する「人権教育のための世界計画:第4フェーズ行動計画採択決議(A/HRC/RES/42/7)」が第42回人権理事会において無投票で採択された(我が国は共同提案国)。
  • https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/kyoiku/index.html

4.おわりに

 日本の外務省は、国連の世界人権会議後の人権政策に日本政府もコミットした。それにより外務省も国際人権を基準にした人権外交を積極的に展開するようになった。

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